思い出の渚を歩く

プロローグ：「過ぎ去りし日々への序章」

主人公:佐藤幸雄、78歳

幸雄の妻、美智子が亡くなった後、彼は深い悲しみと寂しさの中で日々を過ごしていた。美智子との多くの思い出が、家の隅々に残されている。しかし、美智子の死とともに、幸雄自身の記憶も徐々に薄れていくように感じられた。

医師から「軽度認知障害」の診断を受けた時、幸雄は自分の身に起こっている変化を実感する。忘れ物が増え、時には昨日の出来事さえ思い出せないことがあった。幸雄は、この状況がやがて「認知症」へと進行するかもしれないという恐れに直面する。

一方で、美智子の遺品を整理している中で、過去の旅行の写真や日記を見つけるたびに、美しい思い出が心に甦る。幸雄はこれらの思い出を大切にし、美智子との幸せな時間を忘れたくないという強い願いを抱く。

そんなある日、幸雄は決意する。認知症が進む前に、美智子と訪れた場所、家族と楽しんだ旅行地をもう一度巡ることを。これは美智子への最後の敬意であり、彼自身の記憶を辿る旅でもあった。彼は、この旅が過去との再会であり、自分自身との対話になることを期待していた。