2年ほど前から、75歳以上の後期高齢者向けの健康診断で、フレイルの健診が開始されたのをご存じでしょうか。
適切な介護は、高齢者の体の状態を知るところから始まります。今回は、高齢者の体の変化について、周囲が知っておくべきことをご説明します。
フレイルとは?
フレイルとは、「健康な心身」と、「要介護状態の心身」との中間地点の段階を指します。つまり、普通に生活はできているけれど、要介護の方向へ移行しつつある状態、という意味です。色に例えるならば、白と黒の中間のグレーのようなイメージです。
厚生労働省のデータによりますと、介護認定を受けた人で、要介護や要支援の状態にある人は、「認知症」「脳血管疾患」「関節疾患」「骨折・転倒」だけが原因ではなく、「高齢による衰弱」(つまりフレイル状態)も原因の一つとなっている、という結果が出ています。
(出典:厚生労働省 国民生活基礎調査の概況 のデータを加工して作成)
何か特別な出来事があったから要介護や要支援になったわけではなく、自然な体の老化が原因になった、という高齢者の場合は、それを早い段階で察知し、予防ができたならば、もう少し健康に過ごせる時期が増えていたのかもしれません。
高齢者の体は、どう変化していくの?
それでは、時間帯別に体の変化を確認してみましょう。
若い頃の日課だったジョギングができなくなった為、ゆっくりと散歩(足の力や肺活量低下)
朝食の時に、むせてしまう(誤嚥)
小さな字で書かれた朝刊を読むのがつらい(老眼)
外出先で偶然会った、知人の名前をすっかり忘れてしまう。話をしていても名前が出てこない(短期記憶障害)
色々話しかけられても、会話の途中で聞き取りにくくなることが増える(聴力低下)
昼食がたくさん食べられない(胃酸分泌低下)
日中に普段より歩き回ったせいか、腰痛が悪化
寝るまでに時間がかかる(入眠障害)
トイレで真夜中に何度も起きてしまう(泌尿器の機能低下)
その他の体の変化として、以下のような症状も出始めます。よく見ると、若い世代の方でも共通している事項はありますよね。
高齢者の家族が気を付けたいポイント
①病気に対する体の反応
若い人なら、痛みによって初めて気が付ける病気はたくさんあります。しかし、高齢者は老化によって痛み自体が感じにくい傾向があるため、重大な病気に早く気が付くことができません。
例えば、定期的に健康診断を受けるなどして、体の異常をチェックすることが大切です。
②投薬の適切な量
大量の薬を投与されている場合、副作用についてもよく観察する必要があります。
どんどん増え続ける薬の量、おかしいと思いませんか?薬は体を治すもの、だとしたら、治っていけば、薬は減っていくのが普通です。もともとの持病の薬以外が、増え続けるようであれば、薬が合っていない可能性も否定できません。
場合によっては、セカンドオピニオンを利用して、薬の種類や量が適切かどうか、専門家の意見を多方面から聞くのも賢い判断です。
③脱水症状の進行
老化が進むと、体内の水分保有量が減少してしまいます。そのため、熱中症にもなりやすく、若い人と比べると、すぐに危険な状態になってしまいます。周囲の人は、積極的に水分補給を勧めましょう。
もし、明らかに喉が渇く環境にもかかわらず、飲まない場合は、体がそのことに反応していませんので、少しでも飲ませないと危険です。
例えば、「美味しい特別な飲み物だから、せっかくの頂きものだから、試しにどう?」とか、何か理由をつけて、飲んでもらいましょう。
いつもと違う味だと、気分が変わって飲みやすい場合があります。
老化の進行を遅らせるためには
高齢者の生活のすべてを介助しないこと
高齢者の動作が遅くなったり、効率が悪かったりすると、ついつい全部を手伝ってしまいがちですが、そうすると、せっかくの衰えていない身体能力の、活躍の場を奪ってしまうことにもなりますので、注意が必要です。
家族は高齢者の身体能力をよく観察しながら、必要なところは介助し、衰えてない部分については、それを維持するために配慮してあげることが長生きの秘訣です。
老化しても快適に過ごすには
高齢者の身体能力維持のためには、介護が絶対必要な部分と、時間がかかっても温かく見守る部分と、その見極めが重要、とわかっていても、家では、介護をする側もやらなければならない事がたくさんありすぎて、限界を感じませんか?
食事・掃除・洗濯など家事全般を毎日続けるのは、想像以上に負担が大きくなります。
介護施設では、介護のスペシャリストが高齢者を常に見守りますので、安心です。
老人ホームや介護施設がおすすめ
例えば、食べる量が少なくなってしまった高齢者は、栄養が偏ったり、低栄養になってしまう危険性が高まります。
家庭では、食欲のなくなってしまった高齢者のために、毎食工夫して食事を作るのは、かなり大変です。しかし、施設に入ると、栄養士が日替わりのメニューで飽きることなく、食欲も増す効果があります。
例えば、血糖値が上がりやすい高齢者のためには、糖質が低めでも満足感の高い、プロならではの味付けの工夫がされます。
また、骨の衰えが気になる方でも、バリアフリーで転倒防止策はバッチリの環境です。家では全面リフォームするのはコストの面であきらめる方も多いでしょう。
よって、高齢者の長生きのためには、最適な環境であるといえます。
まとめ
高齢者の体の変化について、どのように感じましたか。
自分のこととして置き換えてみると、日常生活を普段通りに過ごすだけでも、大変、ということがわかりますよね。
老化は個人差があり、70代でまだまだ活発に仕事ができる人もいれば、老化が進んで介護認定を受ける人もいます。よって、何歳になったらこうなる、という明確な区切りはありません。
できる限り身体能力を維持しながら、年齢を重ねていき、人生を楽しみたいものですね。
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