老健を利用するのにかかる費用がいくらか知りたいですか? 老健とはどんな介護施設なのかという点や、実際にかかってくる費用について気になる方も多いでしょう。
そこで今回は老健の特徴や入居にかかる費用、自己負担を軽くする減免制度について解説します。
他の介護施設との比較も行いますので、老健の利用について悩んでいる方は是非参考にしてみてください。
介護老人保健施設(老健)とは?
老健は公的な入所型の介護保険施設です。要介護高齢者(要介護1以上)の自宅復帰を目指し、医師による医学的管理の下、24時間体制で看護、介護を提供します。
老健の特徴と種類
老健の特徴は3つあります。
- 比較的費用が安い
- 医療が充実している
- 入居期間に定めがある
順番に見ていきましょう。
比較的費用が安い
老健は公的な介護施設であるため、利用料が民間の介護施設よりも安くなっているのが特徴です。
さらに各種減免制度を利用することにより、自己負担額を引き下げることもできます。利用料の面で見ると入所型の介護施設の中ではトップクラスに優秀な介護施設です。
医療が充実している
老健には常勤の医師がおり、看護師が手厚く配置されているため、他の介護施設よりも医療体制がしっかりとしているのが特徴です。
他の介護施設では医師が居なかったり、看護師の人数が少なかったりする場合があるので、医療面に不安のある人にとって老健の医療体制は安心材料となります。
入居期間に定めがある
老健はリハビリによる在宅復帰を目的とした介護施設であるため、3ヵ月から6か月程度の入居期間の定めがあるのが特徴です。
期日に達しても目標とする身体状態まで回復していない場合や、家族の受け入れ態勢が整っていない場合は入居期間を延長できる施設もあります。
老健に入所できる条件
老健入所の条件は要介護1以上であることです。認定調査で自立や要支援と判定された場合は入所できません。
また施設によっては特殊な医療行為が必要な場合や、24時間体制での医療行為が必要な場合は入所できない可能性もあります。例えば以下のような場合です。
- 夜間の痰の吸引が必要な場合
- 病状が安定していない場合
- 感染症にかかっている場合
特に医療的な配慮が必要だと思われる場合は、医療体制の充実した医療法人が運営する老健を探してみるのがおすすめです。
他の介護施設との特徴の違い
老健は入所期間に定めがあるものの、料金が手ごろで介護施設の中では医療体制に秀でているのが特徴です。
他の介護施設にもそれぞれ特徴があるので、見比べてみましょう。老健を含めた主要な入所型の介護施設7種をご紹介します。
施設名(略称) | 入所条件 | 入所期間 | 医療体制 | 施設の方針 |
介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上 | 期間の定めあり | 充実 | 在宅復帰の支援 |
特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上 | 期間の定め無し | やや充実 | 重度の利用者の自立支援 |
介護療養型医療施設(療養) | 担当医からの紹介 | 期間の定め無し | 医療に特化 | 長期的な医療を提供 |
ケアハウス | 要介護1以上 | 期間の定め無し | 手薄 | 軽費な老人ホーム |
グループホーム | 要支援2以上で認知症の人 | 期間の定め無し | 手薄 | 認知症高齢者の共同生活 |
有料老人ホーム | 施設により異なる | 期間の定め無し | 施設により様々 | 住居と介護の提供 |
サービス付き高齢者住宅(サ高住) | 60歳以上の高齢者 | 期間の定め無し | 手薄 | 高齢者へ住居の提供 |
老健、特養、療養は重度の要介護者の受け入れに特化しており、ケアハウス、グループホーム、サ高住は比較的軽度の利用者を想定しています。
軽度の利用者を想定した施設では重度の利用者は入所を断られる場合があります。また入所中に重度化が進むと退所となる場合もあるので注意が必要です。
老健入所にかかる費用はいくらなのか?
老健の入居金と月々の利用料金
老健は入居金がかからず、月々の利用料も手ごろな施設です。老健には4種類の居室タイプがあり、それぞれ利用料が異なります。
- 従来型多床室
- 従来型個室
- ユニット型個室
- ユニット型個室的多床室
結論から言えば従来型多床室が最も利用料が安く、ユニット型個室が最も利用料が高くなります。
利用料は自己負担額1割の場合を想定しています。利用者の所得が高い場合は2割負担、3割負担となり利用料も変わってくるので注意が必要です。
従来型多床室
従来型多床室はひとつの部屋に2~4台のベッドが配置され、複数人が一緒に寝起きする大部屋タイプの居室です。
仕切りはカーテンのみであり、プライバシーの確保は難しいですが、個室に比べると料金が低く設定されています。
月々の利用料は賃料、食費込みで7.7万円~8.7万円程度が相場となります。
従来型個室
従来型個室はひとつの部屋に1台のベッドが配置され、ひとりでひとつの部屋を使用する個室タイプの居室です。
個室ですのでプライバシーが確保され、部屋のレイアウトもある程度自由にできるのが特徴ですが、料金は高めに設定されています。
月々の利用料は賃料、食費込みで11.6万円~12.3万円程度が相場となります。
ユニット型個室
ユニットとは入所者10人ほどで形成する生活単位です。ユニット型個室では従来型個室同様ひとりでひとつの部屋を使用します。
生活単位が少人数であるため、手厚い介護を受けられる傾向にありますが、従来型に比べ料金は高めに設定されています。
月々の利用料は賃料、食費込みで12.7万円~13.6万円程度が相場となります。
ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室はユニットを生活単位としながら、多床室のように大部屋を仕切った2~4人が寝起きする居室です。
ユニット型であるため手厚い介護が期待できますが、多床室であるためプライバシーの確保は難しい作りとなっています。
月々の利用料は賃料、食費込みで11.7万円~12.6万円程度が相場となります。
利用料金以外にかかる費用
老健では介護保険サービスや施設の利用料のほかに、理美容代や新聞雑誌など日常生活に必要な費用は自己負担となります。
施設によって負担を求められる費用は変わります。気になる場合は施設の窓口に問い合わせてみると良いでしょう。
また以下の費用は利用料に含まれているため、老健では別途料金を請求されることはありません。
- おむつに関する費用
- 薬に関する費用
薬に関しては老健の負担となります。あまりにも高価な薬を服用している場合は入所を断られる場合もあるので注意が必要です。
他の介護施設との費用の違い
老健は介護施設の中では比較的手ごろな費用で利用することができます。公的な介護施設であるため、行政からの補助が手厚いからです。
それでは他の介護施設の費用はどうなっているのでしょうか?以下の表は先ほどご紹介した7種類の介護施設の利用料の相場です。
施設名(略称) | 入所一時金の相場 | 月額利用料の相場 |
介護老人保健施設(老健) | 入所一時金なし | 7.6万円~13.4万円 |
特別養護老人ホーム(特養) | 入所一時金なし | 8.8万円~12.9万円 |
介護療養型医療施設(療養) | 入所一時金なし | 7.6万円~13万円 |
ケアハウス | 0円~30万円 | 9.2万円~13.1万円 |
グループホーム | 0円~15.8万円 | 10万円~14.3万円 |
有料老人ホーム | 0円~数百万円 | 15.7万円~28.6万円 |
サービス付き高齢者住宅(サ高住) | 0円~20.4万円 | 11.8万円~19.5万円 |
特養や療養、ケアハウスは老健と同様に公的な介護施設であるため、比較的少ない費用で利用ができるのが特徴です。
公的な介護施設は低価格なので人気ですが、競争率が高く長期間の空所待ちとなる場合もあります。
老健で利用できる費用減免制度とは?
費用減免制度とは利用者の自己負担を減免できる制度です。所得に応じて第1段階から第4段階まであります。
設定区分 | 対象者 |
第1段階 | 生活保護など、または世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金額+合計所得額が80万円以下 |
第3段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金額+合計所得額が80万円以上 |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯 |
具体的な減免制度は以下の4つです。
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
- 高額介護サービス費用
- 医療費控除制度
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
順番に見ていきましょう。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)は毎月に支払う居住費と食費を抑えることが出来る制度です。
所得や貯金額などが一定額よりも低い利用者は市区町村に申請すると、負担限度額を超えた分の居住費と食費を公費で負担することができます。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)制度を利用できるのは認定区分が第1段階から第3段階までの利用者です。
高額介護サービス費用
高額介護サービス費用とは月々の上限額を超えた分の介護保険サービスの費用が負担される制度です。
月々に利用した介護保険サービスの自己負担の合計が一定の上限額を超えた場合、市区町村に申請することで、超過した費用を公費で負担することができます。
具体的な月々の自己負担の上限額は以下の表の通りです。
設定区分 | 負担の上限 |
第1段階 | 15,000円(個人) |
第2段階 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
第3段階 | 24,600円(世帯) |
第4段階 | 44,400円(世帯) |
なお、高額介護サービス費用制度の対象とならない介護サービスがある他、サービス支給限度額を超えた分は自己負担となるので注意が必要です。
制度について不安があれば、施設の相談員やケアマネジャーに相談してみると良いでしょう。
医療費控除制度
医療費控除制度とは生計を一にする家族の医療費が10万円を超える場合、税務署に申請することで一定の金額が還付される制度です。
老健では介護保険制度下で施設サービスの対価として支払った額(施設サービス費、食費、居住費)が医療費控除の対象となります。
老健の費用の全額をカバーできるわけではなく、日常生活費や雑費などの費用は対象外となるので注意が必要です。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、世帯内で支払った医療保険と介護保険の自己負担額の合計が年間の上限額を超えた場合、自己負担額を軽減できる制度です。
高額介護サービス費用と似たような制度ですが、高額介護サービス費用制度は月々の自己負担額が対象であるのに対して、高額医療・高額介護合算療養費制度は年間の自己負担額が対象となります。
高額医療・高額介護合算療養費制度が利用できる場合は自治体から通知が来るので、申請漏れがないようにしましょう。
具体的な年間の自己負担の上限額は以下の通りです。
70歳以上の人の場合
所得区分 | 所得要件 | 自己負担限度額 |
現役並み所得者Ⅲ | 70歳以上の国民健康保険被保険者に、現役並の所得(住民税の課税所得が690万円以上)がある人が1人でもいる世帯に属する方 | 212万円 |
現役並み所得者Ⅱ | 70歳以上の国民健康保険被保険者に、現役並の所得(住民税の課税所得が380万円以上)がある人が1人でもいる世帯に属する方 | 141万円 |
現役並み所得者Ⅰ | 70歳以上の国民健康保険被保険者に、現役並の所得(住民税の課税所得が145万円以上)がある人が1人でもいる世帯に属する方 | 67万円 |
一般 | いずれにも当てはまらない方 | 56万円 |
低所得者Ⅱ | 住民税非課税世帯 | 31万円 |
低所得者Ⅰ | 住民税非課税世帯で、世帯員全員に所得がない世帯(公的年金控除額を80万円として計算) | 19万円 |
70歳未満の人の場合
所得区分 | 所得要件 | 自己負担限度額 |
ア | 所得金額が901万円以上 | 212万円 |
イ | 所得金額が600万円以上901万円以下 | 141万円 |
ウ | 所得金額が210万円以上600万円 | 67万円 |
エ | 所得金額が210万円以下 | 60万円 |
オ | 世帯主及び国民健康保険加入者全員が住民税非課税 | 34万円 |
まとめ
老健利用にかかる費用は月々7.6万円~13.4万円程度と、他の介護施設に比べると手ごろな料金となっています。
入所系の介護施設の中では入所期間に定めがあるものの、特養よりも入所条件は緩く、医療体制も充実しているのが特徴です。
各種減免制度を利用すれば、さらに自己負担額を軽減することもできます。
切羽詰まって妥協しないためにも早めに介護施設探しをスタートし、じっくりと入所する介護施設を見定めるのがおすすめです