「老人ホームにはどんな種類があるんだろう」「介護施設ごとに入居条件や料金は違うのかな」とお悩みの方はいませんか?老人ホームと言っても、入居の条件やサービス内容・料金体系などはさまざま。種類が多くてイメージがつきにくいですよね。
そこで今回は、老人ホームの種類や特徴・選び方などを具体的に解説していきます。ご両親が老人ホームに関わる方や、ご自身で介護施設を探している方は、最後まで読んで参考にしてみてください。
老人ホーム・介護施設の種類は?
老人ホームの種類一覧
老人ホームの種類は、運営主体や役割により主に11種類に分けられます。施設の種類ごとの特徴を、下の表にまとめました。なお「認知症の受け入れ」項目は軽度なら可能な場合に△、「看取りの対応」項目は施設によって可能な場合を△としています。
種類 | 運営主体 | 初期費用(入居一時金) | 月額費用 | 受け入れ可能な介護度 | 認知症の受け入れ | 看取りの対応 | 入居待ち期間 |
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特別養護老人ホーム | 公的施設 | 0円 | 5〜22万円 | 要介護3〜5 | ○ | △ | 長い |
養護老人ホーム | 公的施設 | 0円 | 0〜14万円 | 自立 | × | × | 短い |
介護老人保健施設 | 公的施設 | 0円 | 8〜20万円 | 要介護1〜5 | ○ | △ | 長い場合も |
介護医療院 | 公的施設 | 0円 | 8〜20万円 | 要介護1〜5 | ○ | ○ | 長い場合も |
ケアハウス | 公的施設 | 0〜数千万円 | 6〜30万円 | 自立〜要介護3程度 | △ | △ | 長い |
介護付き有料老人ホーム | 民間施設 | 0〜数千万円 | 15〜35万円 | 自立〜要介護5 | ○ | △ | 短い |
住宅型有料老人ホーム | 民間施設 | 0〜数千万円 | 15〜35万円 | 自立〜要介護5 | △ | △ | 短い |
健康型有料老人ホーム | 民間施設 | 数百〜数千万円 | 15〜50万円 | 自立 | × | × | 短い |
サービス付き高齢者向け住宅 | 民間施設 | 0〜数十万円 | 10〜30万円 | 自立〜要介護3程度 | △ | × | 短い |
グループホーム | 民間施設 | 0〜数十万円 | 10〜30万円 | 要支援2〜要介護5 | ○ | △ | 長い場合も |
シニア向け分譲マンション | 民間施設 | 数千万〜数億円 | 10〜30万円 | 自立〜要介護5 | △ | △ | 短い |
公的施設とは
公的施設とは、国や地方自治体が運営する施設のことで「介護保険施設」とも呼ばれます。介護度の高い人や低所得者に対しての保護と支援が重点的に行われ、民間施設よりも費用が安いのがメリットです。一方で、料金が抑えられる分人気があり、入居待ち期間が長いのがデメリットと言えます。
民間施設とは
民間施設とは、民間企業が運営している施設のことです。高齢者のニーズを満たすよう運営されている場合が多く、充実した設備や豊富なレクリエーション、体の状態に合わせたサービスが受けられるのがメリットです。快適な生活を送れますが、公的施設よりも費用が高いのがデメリットでしょう。
老人ホームの種類ごとの特徴・おすすめの人は?
特別養護老人ホーム(特養)
要介護3以上の人が入居できる介護保険施設で、略して「特養」とも呼ばれます。食事・入浴などの身体介護や、洗濯などの生活支援、リハビリなどの介護サービスを受けられ、終身利用も可能です。
初期費用はかかりませんが、月額費用は共有スペースをもつユニット型個室で15万円前後、従来型個室や多床室では10万円前後です。特養は安くて人気がありますが、介護度や家族状況などを考慮して入居順が決められるため、入居待ち期間が長くなる場合も多く見られます。
したがって特養は、要介護度が高く、費用を抑えたい人におすすめです。
養護老人ホーム
養護老人ホームという名前ですが、介護施設ではありません。経済的・身体的・精神的・環境的に自宅での日常生活が困難な高齢者を対象に、社会復帰を目指すための施設です。介護サービスは受けられないため要介護度の高い人は入居できません。また、入居には地方自治体の審査と措置判断も必要です。
したがって養護老人ホームは、介護の必要はないが、金銭面などの問題から自宅で過ごすのが難しい方に向いています。
介護老人保健施設(老健)
病院を退院した後に自宅に戻って生活をすることが難しい方に向けた施設で、略して「老健」とも呼ばれます。在宅復帰に向けて、入浴や排泄などの介護サービスと、専門スタッフによるリハビリや医療ケアを受けることが可能です。
初期費用は不要ですが、月額費用は4人部屋で9〜12万円前後、2人部屋や個室では特別室料が加算されます。健康状態にもよりますが、原則は3〜6か月の短期利用しかできません。
よって老健は、退院後にリハビリや医療ケアを受けながら、在宅復帰を目指したい方に適しています。
介護医療院
2023年度末で廃止される「介護療養型医療施設」の後継として新設された施設です。医師・看護師が常駐しているため、介護サービスに加えて、たん吸引や経管栄養などの医療サービスを受けられます。また、長期療養を見据えた利用が可能で、看取りやターミナルケアの提供もしています。月額費用は8〜20万程度ですが、初期費用は必要ありません。
したがって介護医療院は、日常的に介護サービスと医療ケアを必要としている方におすすめです。
ケアハウス
自立した生活を送るのが難しい高齢者を対象にした、軽費老人ホームの一種です。ケアハウスには「一般型(自立型)」と「介護型(特定型)」がありますが、どちらも入居の所得制限はありません。入居一時金は0〜30万円程度、月額費用は6〜30万円程度です。
ケアハウスは家族や親戚の援助を受けにくく、自身での生活に不安を感じている方に適しています。
介護付き有料老人ホーム
介護スタッフが24時間常駐し、食事・入浴などの介護サービスを提供しています。要介護5までの方が入居でき、認知症の方の受け入れも可能です。設備の充実度や医療体制など、施設によってさまざまな特徴があるため、利用者に合わせて施設を選べるのもメリットでしょう。
利用には入居一時金と月額費用が必要な場合が多いですが、月額費用に含まれている介護サービス費は、介護度による定額制が設けられています。
したがって介護付き有料老人ホームは、日常的に手厚い介護ケアを受けたい人におすすめです。
住宅型有料老人ホーム
自立〜要介護5までの方を対象に、食事や掃除などの生活支援・安否確認などを提供しています。24時間の介護サービスは提供されないため、介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用する必要があります。
したがって住宅型有料老人ホームは、手厚い介護サービスを必要としない方におすすめです。
健康型有料老人ホーム
介護の必要がない自立した人を対象に、食事・洗濯などの生活支援や、イベントなどのレクリエーションを提供している施設です。入居中に介護が必要になった場合や、認知症を発症した場合には退去しなければいけません。
中にはカラオケやジムを備えている施設も見受けられるため、周囲とのコミュニケーションをとりながら、活発なシニアライフを目指している人に適しているでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
要介護度の低い高齢者を対象にした、バリアフリーのマンション型住宅です。略して「サ高住」とも呼ばれ、現在は「高齢者専用賃貸住宅」・「高齢者向け有料賃貸住宅」からの登録切り替えが行われています。
特徴は自宅のように自由度の高い生活を送りながら、入居者同士でコミュニケーションがとれる談話室や、スタッフによる生活相談・安否確認のサービスが活用できること。
したがってサ高住は、自立した生活を送りたいけれど、単身での生活は不安という方に向いています。
グループホーム
要支援2以上で、認知症を患っている65歳以上の方を対象とした施設です。施設と同じ市区町村に住民票がないと入居はできません。
グループホームの大きな特徴は、入居者が5〜9人のユニットを組んで、洗濯や料理などの役割を分担しながら共同生活すること。顔なじみのメンバーで落ち着いた生活を送りながら、認知症の進行を緩やかにするサポートが受けられます。必要な初期費用は0〜数十万円程度、月額費用は10〜30万円程度です。
65歳以上の認知症をもつ方は、グループホームの利用も検討してみてください。
シニア向け分譲マンション
バリアフリーやコンシェルジュの常駐など、高齢者が過ごしやすいよう設計された分譲マンションです。介護サービスは外部の事業者と契約する必要がありますが、マンションとの提携を行っている場合もあります。
初期費用は数千万〜数億円、月額費用は数十万円と高額ですが、所有権が発生するため、購入後の売却・賃貸・リフォームなどは自由に行えます。また、プールやシアタールームなどの共有設備が充実している場合も多く、快適なシニアライフを堪能できるでしょう。
よってシニア向け分譲マンションは、金銭的な余裕がある場合の住み替えにおすすめです。
どの種類の老人ホームを選べば良いの?
老人ホームの種類を選ぶときのポイント
老人ホームの種類が多く、どれを選べば良いか分からない方も多いはず。そんな方は、介護施設に求めることを考えてみましょう。下の項目について考慮し、必須条件と希望条件を整理することで、選ぶべき老人ホーム像が見えてきます。
- 入居時期・期間
- 予算
- 求めるサービス
- 求める設備
- 立地
自分で考えても分からない場合は、下記のようなプロを頼るのもありですよ。
ケアマネージャー
すでに介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネージャーに相談しましょう。利用者の健康状態を把握しているうえ、近隣地域の施設にも詳しいため、自分に合った老人ホームを提案してくれます。
地域包括支援センター
介護認定を受けていない人は、各市区町村に設置された地域包括支援センターを利用しましょう。高齢者を地域ぐるみでバックアップする体制が整っているため、幅広い相談に対応してもらえます。
民間の紹介センター
全国の老人ホームの情報を把握しており、無料で介護施設を紹介してもらえます。見学や契約など、紹介後のサポートまで行っている企業もあるので要チェックです。
資料請求・施設見学をしてみよう
求める条件を明確にした後は、施設の情報を集めましょう。インターネットや電話・メールにて問い合わせ、まずは施設のパンフレットを取り寄せます。
そして気になる施設をピックアップし、見学の予約をします。見学では施設での生活の様子や、スタッフの雰囲気など、資料だけでは分からないことをチェックできます。比較をするためにも、複数の施設へ見学に行くことをおすすめします。
最初に問い合わせをしてから施設に入居するまで、少なくとも1〜2か月程度の期間がかかる点には注意してください。
よくある質問
介護保険制度ってなに?
介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みです。40歳を迎えた国民は被保険者として加入し、65歳以上で介護や支援が必要とされた場合には介護サービスが利用できます。40〜64歳で特定疾病により介護が必要と認定された場合も同様です。介護保険が適応されると、1割(収入により2・3割)の自己負担でサービスが利用できます。
在宅介護と施設入居どちらを選べば良いの?
在宅介護は住み慣れた家で生活が送れ、費用の負担も少なくて済みます。その反面、慣れない介護への不安や、介護する側の心身の負担は大きくなるでしょう。一方で、施設入居では負担する費用は高額になりますが、介護のプロに任せられる安心感や、緊急時の安定した対応を得られます。
金銭面と、介護する側・される側双方の心身面を考慮して決定するのが望ましいです。
年金だけで入居は可能?
月額料金が安い施設を選べば、毎月の支払いを年金のみで行うことは可能でしょう。ただし入居時には初期費用が必要になる場合も多いため、入居前にある程度の貯蓄をしておくのは大切です。経済的な不安がある場合には、自治体のサポートや助成制度を利用できる場合もありますので、お住まいの地域の窓口に相談してみてください。
元気なうちから入居できる施設はある?
健康型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・シニア向け分譲マンションは、自立した方でも入居できます。レクリエーションが多く、設備が充実している施設も多いため、周囲とのコミュニケーションをとりながらアクティブなシニアライフを過ごせるでしょう。
まとめ
今回は老人ホームの種類ごとに、特徴や入居条件・選び方などを解説しました。介護施設は、運営主体やサービス・費用によって細かく分類されています。それぞれの特徴をしっかりと捉えることで、入居者や家族の希望に合った選択ができますよ。
老人ホームがたくさんあって迷ってしまう場合には、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどの専門家に相談する方法もあります。どのようなシニアライフを過ごしたいか考えながら、最適な施設選びを行いましょう。