認知症でも入居できる施設はあるか、気になりませんか?
- 家族の認知症が進行し、自分たちでは手に負えない
- 家族が認知症になり、介護が辛い
上記のようなお悩みを抱えている方も多いでしょう。そこで今回は、認知症患者でも入居できる施設の種類や、施設探しのタイミング、入居までの流れについてご紹介します。
ご家族が認知症にかかり、介護にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
認知症患者を施設に入居させるタイミング
家族が認知症になったとき、家で介護をするべきか、施設に入居させるべきか悩みますよね。ここでは認知症の方の、施設入居を検討すべきタイミングをご紹介します。
認知症の症状が軽い段階で
認知症は薬で進行を遅らせることはできても、症状を改善して完治させることは、ほとんどできません。病状が進行すると、自分が置かれている状況が分からず、コミュニケーションが取れなくなることもあります。
そのため症状が軽いうちから施設探しを始めることで、ご本人の希望をヒアリングでき、居心地の良い施設を見つけやすいでしょう。また、認知能力が残っている段階で施設に入居した方が、新しい環境になじみやすいと言われています。
介護の負担が増えていない段階で
認知症が進行すると、時間を問わず家の外に出て行ってしまう「徘徊」や、自分の便を素手で触って部屋を汚してしまう「弄便(ろうべん)」、介護者への「暴力・暴言」などが見られることもあります。
「家族だからなるべく自分たちで介護を続けたい」と思っていても、手に負えない言動に心が疲弊し、介護うつや虐待・殺人などに繋がりかねません。
家族の負担が大きくなりすぎてからでは、時間と労力のかかる施設探しはうまくできないのが現状です。そのため介護に余裕があるうちから、施設探しをしておくのが理想です。
施設に入居すると認知症が進行する?
「介護施設に入ると、認知症が進む」という話を聞いたことはないでしょうか。結論から言えば、施設に入居することで認知症が進行するリスクはある一方、施設でしか受けられない認知症ケアがあるのも事実です。
認知症の進行リスク
施設入居で認知症を進行させるリスクには、以下の3つが挙げられます。
- 生活環境の大きな変化
- 施設スタッフの介助により、考えて行動する機会の減少
- 趣味・外出・飲酒・喫煙などの自由の制限
また、薬の変更の影響でボーッとしていたり、新しい生活に戸惑いを感じて孤立している様子を見て、「認知症が進行した」と勘違いするご家族も多いです。
施設で受けられる認知症ケア
施設での認知症ケアとしては、主に以下の3つがあります。
- レクリエーションで意欲を引き出す
- 人との交流で刺激を与える
- 24時間体制で見守りを行う
在宅介護でも施設入居でも、認知症の進行を止めることはできません。病状の進行速度は一人ひとり異なるので、適切な介護ケア体制を整えることが大切です。
認知症患者が入居できる施設の種類
認知症の方が利用できる施設をご紹介します。
特別養護老人ホーム(特養)
介護の必要度が高い方を対象とした、公的機関のひとつです。原則として要介護3以上の方しか入居できませんが、認知症の場合は、要介護1 ・2でも入居が認められる場合があります。
看取り対応をしている施設も多く、終のすみかとして人気の高い施設です。近年は少人数でのケアに特化した「ユニット型特養」も増えてきているため、大人数での集団生活が苦手な認知症の方でも、ストレスが少なく生活できるでしょう。
入居一時金 | 0円 |
月額費用 | 5〜20万円程度 |
メリット | 料金が安い 終身利用が可能 |
デメリット | 入居までの待機期間が長い場合がある |
介護付き有料老人ホーム
介護スタッフが24時間常駐し、食事や入浴などの介護サービスを提供しています。設備の充実度や医療連携体制、レクリエーションなどは施設ごとに異なるので、ご本人に合った施設を選びやすいのが特徴です。
また要介護5までの方を幅広く受け入れているので、認知症の進行で要介護度が上がった場合にも住み続けやすいと言えます。
入居一時金 | 0〜数千万円 |
月額費用 | 15〜35万円程度 |
メリット | 介護サービスが充実している 入居までの待機期間が短い |
デメリット | 料金が高い場合が多い |
グループホーム
認知症の高齢者に特化した施設です。環境の変化が苦手な認知症患者のため、入居者が5〜9人のユニットを組んで生活をします。顔なじみのメンバーで落ち着いた日々を過ごすことで、認知症の進行を緩やかにすることが目的です。
入居の条件として、要支援2〜要介護5に認定された65歳以上の方であることと、同じ市区町村内に住民票があることが挙げられます。
入居一時金 | 0〜数十万円 |
月額費用 | 10〜30万円程度 |
メリット | 手厚い認知症ケアが受けられる なじみの地域で生活を送れる |
デメリット | 医療ケアは提供しない施設が多い |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
自宅のように自由度の高い生活が送れる、バリアフリー型の住宅です。一般的には要介護度が低い方を対象に、スタッフによる安否確認や生活相談を行っています。
しかし、なかには介護職員が在籍し、介護サービスの提供や看取り対応をしているサ高住もあります。認知症ケアの充実度は施設によって異なるため、事前によく確認しましょう。
入居一時金 | 0〜数十万円 |
月額費用 | 10〜30万円程度 |
メリット | 自由度の高い生活が送れる 安否確認や生活相談が受けられる |
デメリット | 要介護度の高い認知症患者は受け入れていない場合も多い |
介護老人保健施設(老健)
リハビリと医療ケアを中心に提供し、在宅復帰を支援する施設です。原則として、3〜6ヶ月間の短期利用しかできません。
要介護1〜5に認定されていれば、認知症の方でも入居が可能です。ただし薬はすべて施設内で処方されるため、薬の種類や数によっては、入居が難しい場合もあります。
一方、認知症専門棟を併設している老健もあるので、受け入れ条件を事前に確認することが大切です。
入居一時金 | 0円 |
月額費用 | 8〜20万円程度 |
メリット | リハビリ・医療ケアが充実している 認知症専門棟を併設している施設もある |
デメリット | 終身利用はできない 薬によっては入居を断られる場合がある |
認知症患者に適した施設の探し方
認知症の方が施設を探すときの流れや、気を付けるべきポイントをご紹介します。
施設探しの4つのステップ
①希望条件を考える
今後どのような生活を送りたいか、まずは施設に求める希望の条件を見つけましょう。施設探しでよく検討される項目は、以下の3つです。
- 費用(入居時や月々の支払いはどの程度可能か)
- 立地(家族が面会に行きやすいか・周辺環境に求めることはあるか)
- サービス内容(介護サービスや医療ケアなどはどの程度必要か)
また、希望の条件を考えた後は「これだけは絶対に譲れない」という項目から、優先順位を決めましょう。優先順位を考える際は、ご本人とご家族の双方の意見を取り入れることが大切です。
すべての要望が叶う理想の施設を見つけるのは難しいため、ご本人とご家族の間で妥協点を見つけておくと、その後の施設選びがスムーズに進みます。
②希望条件に沿った施設を探す
考えた希望の条件をもとに、施設探しを開始します。以下は、希望条件とそれに適した施設の一例です。
希望条件 | 適した施設 |
---|---|
費用をなるべく抑えたい | 料金が比較的安い公的施設 |
家族との時間も大切にしたい | 面会に行きやすい近場にある施設 |
施設でも活発に行動したい | レクリエーションが充実している有料老人ホーム |
毎日を穏やかに過ごしたい | 顔なじみのメンバーで生活できるグループホーム |
自分のことは自分でしたい | リハビリが充実している老健 |
インターネットでの施設探しは早くて便利ですが、既に介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネージャーに相談するのがおすすめです。
ケアマネージャーはご本人の状態をよく知り、周辺施設の情報も把握しています。認知症ケアに適した施設を、提案してくれるでしょう。
他にも自治体の地域包括支援センターや、民間の施設紹介センターで、施設を探すことが可能です。
③施設の具体的な情報を集める
気になる施設を見つけたら、資料請求を行います。資料には施設の特徴やサービス内容が記されているので、細かくチェックしましょう。
特に、認知症の方の受け入れ条件には注意が必要です。要介護度・年齢・医療依存度・問題行動の程度などで受け入れてもらえない可能性もあるため、入居条件を満たしているかを事前に確認してください。
④施設見学へ行く
施設を見学することで、資料だけでは分からなかった実際の雰囲気を感じることができます。入居者同士の交流や、スタッフのサービスレベルを確認できる良い機会なので、積極的に足を運んでください。
施設見学は、なるべくご本人と一緒に行くのが理想です。実際に生活を送るのはご本人なので、施設の雰囲気は肌に合うか、心地良く過ごせそうかを体感してもらいましょう。
施設探しでチェックすべき3つのポイント
認知症患者への対応方法
認知症が進行すると、勝手に出て行こうとしたり、他の入居者に暴言や暴力をはたらいたりするなど、トラブルを起こすことも少なくありません。そうしたトラブルに対して、施設はどのような対処法をとっているか、入居前に確認しておきましょう。
また新しい環境が苦手な認知症患者は、自宅に帰りたいという「帰宅願望」を強く持つ方もおられます。慣れない環境に戸惑う入居者に寄り添い、思いを尊重しながら接してくれるスタッフがいると、ご家族としても安心して預けられるでしょう。
過去の退去事例
施設見学へ行った際には、過去にどのような退去事例があるかを確認しておくと安心です。
過去に看取りまで利用した方が多ければ、特に問題はありません。一方、入居者の問題行動で退去を余儀なくされたケースが多い場合は、ご家族の認知症の進行で退去を強いられる可能性もあります。
また一から施設探しを行うのは、ご本人やご家族にとって、大きな負担がかかるものです。予期せぬ退去勧告に困らないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。
ご本人はどう感じているか
認知症患者の中には、施設への入居を嫌がる方もおられます。その場合は無理に入居させたり、いきなり施設見学に誘うのではなく、ご本人の気持ちに一度耳を傾けてみましょう。
- 住み慣れた我が家を離れたくない
- 家族から見捨てられるように感じる
- 知らない人たちと暮らしたくない
施設入居を拒む裏には、上記のようにさまざまな思いがあります。ご本人が感じている不安や寂しさを払拭できるよう、焦らずに働きかけていきましょう。
入居を拒む理由に合わせたアプローチ方法
- 施設に対してマイナスイメージを持っている方
-
元気な高齢者でも利用していることや、レクリエーションが多く活気に溢れた明るい施設が多いことを知ってもらう
- 自宅を離れたくない方
-
体験入居やショートステイなどを活用し、新しい環境に徐々に慣れてもらう
ご家族だけで話し合いが難しい場合は、ケアマネージャーを頼りましょう。第三者の方が本音を話しやすく、説得を聞き入れやすいこともあります。
まとめ
認知症患者が入居できる施設は、特養・介護付き有料老人ホーム・グループホームなどが挙げられます。認知症の症状が軽い段階や、ご家族が介護疲れしていない段階から施設入居を検討しておくことで、双方にとってストレスが少ない施設選びができるでしょう。
ご本人の気持ちも確かめながら、認知症患者に合った施設の利用を検討してください。