介護の負担軽減のための方法を知りたくありませんか?毎日の介護が大変で辛い、介護がもっと楽になる方法はないのだろうか、とお悩みの方も多いでしょう。
そこで今回は介護疲れの実態や介護の負担軽減のための具体的な方法、役立つ介護サービスについて解説します。介護施設への入居を検討したほうが良いケースもご紹介するので、介護の負担軽減について悩んでいる方は是非参考にしてみてください。
介護に疲れてしまったら?
介護疲れの実態
介護疲れとは介護に関する様々な負担により発生する疲労です。誰にでも起こり得る状態であり、介護うつや介護離職のような大きな社会問題の原因となっています。介護疲れは要介護者とその家族が共倒れしてしまう可能性もある、非常に危険な状態と言えるでしょう。
責任感の強い方は家族の介護で疲れきっていても、周りに助けを求められずに抱え込んでしまいがちです。そして疲労によりうまく物事に対応できない自分を責め、さらに疲労を貯め込んでしまう悪循環に陥ります。
介護疲れの対策の第一歩は自身の疲労に気づくことです。普段の家事や仕事をしながらの介護は誰でも疲れます。注意力の低下により日常の小さいミスが増えてきたら、疲労が蓄積してきているサインと言えるでしょう。自分ではまだまだ元気なつもりであっても、介護による疲労は確実に蓄積しています。
介護疲れの原因
介護疲れの原因となる負担は3つです。
- 精神的負担
- 身体的負担
- 経済的負担
順番に解説します。
精神的負担
精神的負担は介護に関する人間関係の悩みや今後の生活への不安から生じるのが特徴です。多くの介護は急に始まります。そのため事前にしっかりとした介護の準備ができていない場合がほとんどです。
介護が始まると行政や介護事業所の担当者だけでなく、他の親族や家族、要介護者本人との密接なコミュニケーションが必要となります。十分な知識を備えていればやり取りがスムーズに進みますが、多くの人は介護について理解が深いとは言えません。すれ違いや勘違いが発生し、人間関係が煩わしくなることも多いでしょう。
人に頼れなくなると問題を抱え込みがちになり孤独感が強まります。介護は終わりが見えにくく、先行きへの不安から多大なストレスを感じることもあるでしょう。精神的な負担が強くなりすぎると「介護うつ」にも発展する可能性があるので注意が必要です。
身体的負担
身体的な負担は要介護者への日常的な介助や、不規則な生活による睡眠不足により生じます。他人から見れば大した負担ではなくても、毎日の介護は確実に疲労を蓄積させるものです。夜中に何度もトイレやおむつで起こされたり、思うように休息が取れなかったりすると疲労はどんどんたまっていきます。
トイレや着替え、移動や起き上がりの介助等は、要介護者の身体を直接動かす重労働です。場合によっては身体を持ち上げたり、倒れないように支えたりしなければなりません。1度や2度の介助であればそれほどの負担ではありませんが、1日に何回も介助を行う日が毎日続くと腰、ひざ、腕などに過度な負担がかかります。
要介護者がひとりで外出できない場合は通院や散歩への付き添いも必要です。毎日の介護を行っていると、自然と要介護者中心の生活となってきます。場合によっては休息のための時間を持つことも難しくなるでしょう。
経済的負担
介護のための出費や収入の減少は経済的な負担を生じさせます。介護保険による支援はありますが、紙おむつや防水シーツ、介護食品などの介護用品は実費での支払いが必要です。介護のために仕事を減らしたり辞めたりした場合は収入も減少します。介護を始めると経済的に不安を抱える人は多いことでしょう。
出費が増加した状態や収入が減少した状態が続くと、貯蓄の取り崩しや要介護者の年金に頼らざるを得なくなる可能性があります。そうすると介護が終わった後は要介護者の年金には頼れず、生活を立て直すための貯蓄が尽きている場合もあるでしょう。経済的な負担は家族全員の生活にも影響を与えるので注意が必要です。
介護疲れにより引き起こされる事態
介護疲れが進行しすぎると発生するのが要介護者と家族の共倒れです。家族の負担があまりにも大きくなると、要介護者の生活だけでなく家族の生活までも崩壊してしまいます。介護を行う際は要介護者の家族に過度の負担がかかっていないか確認をすると良いでしょう。
精神的な負担が大きいと介護うつを引き起こす可能性があり、身体的な負担が大きいと病気や怪我のリスクがあり、経済的な負担が大きいと生活が立ち行かなくなる危険があります。
介護疲れが進むと様々な問題が発生します。要介護者と家族の共倒れを防ぐためにも、介護に疲れを感じてきたら介護負担の軽減を検討すると良いでしょう。介護うつに関しては以下の記事で解説しています。合わせて参考にしてみてください。
介護の負担軽減のためには?
介護の悩みを相談する
介護に疲れを感じているならば、周囲の人や介護の専門家に相談するのがおすすめです。介護に疲れてしまっている状態では、頭がうまく回らず良い考えも浮かびにくくなります。まずは身近な人に相談し、辛さをわかってもらうと良いでしょう。
介護の専門家はケアマネジャーやソーシャルワーカーなどです。介護の相談に対して的確なアドバイスが期待できます。お住まいの地域包括支援センターや介護施設、病院などに窓口が設置されています。いきなり介護施設や病院に相談するのは気が進まない場合は、役場の高齢者福祉課でも介護の相談に乗ってくれるのでおすすめです。
介護を家族だけで行うのは大変です。問題を抱え込みすぎると日常生活にも支障が出てくることでしょう。介護で何か困った際は必ず身近な人や介護の専門家に相談してください。きっと活路が開けてきます。
介護サービスを活用する
家族だけでの介護に限界を感じている場合は介護サービスの活用がおすすめです。介護保険適用のサービスであれば原則1割の自己負担額でサービスを受けることができます。要介護者が介護サービスを受けている間は、家の用事を行ったり休息をとったりと、家族が自由に過ごすことが可能です。
家族だけで介護を行っていると要介護者中心の生活となり、家族の時間の確保が難しくなります。介護サービスを使えばプロの介護職に安心して要介護者のお世話を任せられるだけでなく、普段介護を行っている家族が自由な時間を持てるのが特徴です。
具体的には以下のような介護サービスがあります。
- 自宅で身の回りの介護や医療的な処置を受けられる訪問介護や訪問看護
- 介護施設に通って身の回りの介護や機能訓練が受けられるデイサービス
- 介護施設に短期間の宿泊が可能なショートステイ
- 上記全てのサービスを複合的に受けられる小規模多機能型居宅介護
今回挙げた介護サービスは在宅向けサービスの一例です。自宅で介護を行う際は是非とも利用を検討すると良いでしょう。要介護者の在宅での一人暮らしについては以下の記事で解説しています。合わせて参考にしてみてください。
介護スキルを身につける
在宅で体の不自由な要介護者を介護している場合は介護スキルの習得がおすすめです。介護には介護をする側と介護される側の両方が楽になる技術があります。適切な介護技術を身に着けることができれば、少ない労力でスムーズな動作を行えるようになることでしょう。
介護施設のスタッフは女性の比率が多く、小柄な人も多いです。特に男性の要介護者の介護を行う場合は自分よりも体格が良く、体重も重い相手を抱える場合があるでしょう。ですが適切な介護技術を身に着けたスタッフであれば、自分よりも大きい要介護者に対しても立ち上がりの介助や歩行の介助を問題なく行えます。
介護技術の習得と聞くと難しく感じるかもしれません。ですが最近では無料の動画配信サイトでも介護のプロが介護技術の解説を行っているので、気軽に介護スキルを勉強することができます。立ち上がりや歩行の介助の他にも、食事の介助、おむつの交換、認知症の方との関わり方など、様々な介護スキルが解説されているので是非参考にしてみてください。
介護施設への入居を検討したほうが良いケース3選
在宅での介護に限界を感じたら、介護施設への入居を検討するのがおすすめです。介護施設に入居することで、要介護者と家族が適切な距離感で接することができるようになり、よりよい関係性を築くことができるようになる場合もあります。老人ホームの入居に関しては以下の記事の解説が詳細です。是非参考にしてみてください。
認知症の進行が著しいケース
認知症の進行が著しい場合は介護施設への入居の検討をおすすめします。認知症により脳の機能が低下してくると、日常生活を自立して行うことが困難になってくるからです。特に身体が元気で行動範囲が広い場合は外出先で事故に遭ったり、キッチンの使い方がわからずに火災を起こしてしまったりする可能性があります。
認知症の周辺症状である「物取られ妄想」や「暴言暴力」などは、特に近親者に対して見られやすい行動です。家族が要介護者から責められると、自分の努力や献身が否定されたような気分になります。認知症の症状により本人もつらいでしょうが、家族の苦しみもとても大きなものです。
介護施設に入居して専門のスタッフのケアを受けることで、認知症の周辺症状が落ち着く場合もあります。認知症により在宅介護が難しいと感じたら介護施設への入居を検討すると良いでしょう。認知症の方が入居できる介護施設に関しては以下の記事で解説しています。是非参考にしてみてください。
重度化により日常生活全般が難しいケース
重度化により身の回りのこと全般に手伝いが必要になった場合は介護施設への入居の検討をおすすめします。介護度が上がってくると24時間体制での介護が必要となり、家族だけでの介護が難しいケースも出てくるからです。特に夜間の介護に限界を感じているようであれば、介護施設への入所を検討すると良いでしょう。
要介護3を超えると一般的にひとりでは立ち上がりや歩行ができなくなり、何かをする場合には常に人の手助けが必要になります。日中であれば訪問介護やデイサービスでの対応が可能ですが、在宅介護では夜間の対応まで介護保険サービスでカバーするのは難しいです。重度化が進むとより家族の負担が大きくなることでしょう。
要介護3以上であれば軽費で生涯にわたって受け入れ可能な特別養護老人ホームの利用が可能です。特別養護老人ホームに関しては以下の記事で解説しています。是非参考にしてみてください。
要介護者と家族の折り合いがつかないケース
介護する側と介護される側で折り合いがつかなくなってしまった場合は介護施設への入居の検討をおすすめします。要介護者の要望を家族が叶えられないケースや、家族の介護を要介護者が受け入れられないケースも存在するからです。介護する側と介護される側の関係性が修復不可能なまでに悪くなってしまうと、日々の生活は互いに苦痛でしかありません。
介護施設に入居してからも基本的には家族からのサポートは必要となります。特に大きなけがや病気の際の入院、治療方針の意思決定などには家族の同意が必要です。しかし介護施設によっては家族の関係性を考慮して、最低限の関わりで済ませてくれる場合もあります。
まとめ
介護の負担軽減をするために最も効果的なのは、身近な人や介護の専門家に助けを求めることです。介護に疲れて来たと思ったら、介護サービスの利用を検討したり、楽に介護ができるように介護技術を習得したりすると良いでしょう。
介護疲れが進行すると介護うつの発症や、要介護者との共倒れの危険もあります。在宅介護にも限界があるので、あまり無理しすぎないのが肝心です。介護の負担が大きい場合は介護施設への入居を検討してみてください。