高齢の家族が食事中に、むせることが増えたな、と感じることはありませんか?もしかしたら、それは誤嚥(ごえん)かもしれません。誤嚥性肺炎で亡くなる人の数は増加傾向にあります。今回は、誤嚥を防止するために気を付けるべきポイントついて、ご説明します。
年間で49,000人以上が亡くなる誤嚥性肺炎の事実
誤嚥性肺炎とは、誤嚥(ごえん)が原因で、肺炎になってしまうことです。
2021年の厚生労働省の統計によりますと、誤嚥性肺炎で亡くなった日本人は、49,489人となっており、前年よりも増加しました。(参考までに、令和3年の新型コロナウィルスが原因の死亡は16,756人でした)
3年前の2018年の統計結果では、誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の第7位となっていましたが、2021年では、第6位となり順位が上がっています。
また、高齢者の肺炎の大半は誤嚥性肺炎であるとのデータもあります。
(※出典:厚生労働省 令和3年「人口動態統計月報年計」死因順位別死亡数を元に作成)
誤嚥(ごえん)って何?
誤嚥とは、医学用語です。例えば食事をしているときに、急にむせたりして咳が出てしまうことは誰しも経験がありますよね。あれは、食べ物が食道ではなく、気管の方へ間違って入ってしまったことによる症状です。このことを、誤嚥といいます。
これは、食べ物だけに限らず、飲み物や唾液によっても起こりますので、普段の何気ない動作で誤嚥を起こす可能性は高いといえます。
なぜ高齢者は誤嚥が多いの?
高齢者が他の年代に比べて誤嚥が多いのは、飲食物を体内に取り入れる際に使っている筋肉が、次第に筋力低下を起こすことが原因です。
喉の周りの筋肉が衰えない工夫
普段からできることとして、たくさん会話をする、仲間と集まって歌う、食事の時はよく噛む、などを意識することは大切なことです。もし、一人暮らしで言葉を発する機会が少ない、という場合は、独り言でも構いませんし、誰かに電話をする、好きな本を朗読する、テレビの歌番組で一緒に歌う、など工夫できることはたくさんあります。とにかく、筋肉は使わないと衰えてしまうことを覚えておきましょう。
こんな症状が出たら迷わず救急車を!
咳が出ているうちは、呼吸ができている証拠なので、まだ良い方です。しかし、その咳すらも出なくなり、言葉も発せないほど苦しい状態が続いたら危険な状態です。その他にも、唇の色が普段より濃くなり紫色に変化したり、顔の色も紫っぽくなってきたら、非常に危険なため、素早く119番へ助けを求めましょう。
誤嚥防止策5つ 普段からこんなことに気を付けましょう
なるべく、くすりに頼りすぎない工夫を、普段から行いましょう。
①まずは、食べるときの姿勢をチェックしましょう
高齢者はどんな姿勢で食べていますか?
もし、食事中に、こんな姿勢で食べていたら、口から食道にかけての通り道が歪んでしまいますので、むせたり、誤嚥の可能性が高くなりますので、要注意です。
改善ポイント
背骨をなるべくまっすぐ立てた状態で、食べたり飲んだりすること
②食べ方・飲み方を見直しましょう
高齢者の食事の様子はどうですか?
食欲旺盛で、元気がいいのは良い事ですが、むせる可能性が高くなります。夏場などは、暑さから一気に飲み干したくなる気持ちもわかりますが、注意が必要です。
改善ポイント
食べ物は小さめのスプーンで、少しずつ口に運びよく噛み、飲み物はゆっくりとした動作で少しずつ飲むように心がける
③食材を買うときに、気を付けて選びましょう
丁寧に調理をする時間がありますか?
余裕の時間があれば、どんな食材でも、やわらかくするなどの対応ができますので、高齢者に適した食材に変えることは可能です。しかし、そのような時間がなく素早く作らなければならない時は、手間のかかる食材は、最初から除外して献立を考えるというのも一つの手です。
そのままだと、むせやすい食材例
・粉っぽいもの(きな粉など)
・のどを刺激しやすいもの(レモンや梅干しなど)
・のどに詰まりやすいもの(餅・こんにゃく・ちくわなど)
・長い麺類(パスタ・うどんなど)
④包丁での切り方を変えてみましょう
食材は食べやすい切り方になっていますか?
- 野菜を切るときは、繊維に沿って切るのではなく、クロスするように直角に、一口サイズに切る
- 大きなお肉やお魚は、一口サイズに切る
⑤高齢者が食べやすい調理法
- 蒸して、ほくほくの柔らかい嚙み心地
- 茹でて、柔らかく、あっさりした味付けに
- じっくり煮て味をしみこませて柔らかく
- とろみ専用の食材を使って、飲み込みやすく
「とろみ付け」は、片栗粉を水で溶くのもいいですが、一番簡単なのは、とろみ調整のための専用の食品です。スーパーに売っていますので、時間がない日は、利用しましょう
介護施設はどんな食事のメニュー?
介護施設は、プロの栄養士が毎食の献立を考えてくれます。季節に合った、毎日違うメニューで、食べる楽しみも増え、食欲が増す人もいます。施設によって、食事のメニューは様々ですが、このような特徴があります。
・栄養士が考えた、栄養バランスの良い献立
・健康状態に合わせたメニュー
・季節ごとの懐かしの郷土料理
・イベントごとの、お楽しみ特別メニュー
・認知症でも食べやすいメニュー
なかなか家ではこのように完璧にはできませんよね。
介護施設では、説明会などで、実際の食事を試食できる場合もあります。ぜひ高齢者と一緒に、参加をしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
誤嚥防止のための介護のポイントは、ゆっくりとした動作で、丁寧に一口ずつ、お上品な姿勢で。
あなたの大切な高齢者が、いつまでも、四季折々の食の喜びを感じられますように、願っています。