今年の夏も、各地で猛暑が続き、熱中症での救急搬送が増加しています。熱中症で危険な状態に陥るのは高齢者が最も多い、という事実をご存じでしょうか。
厚生労働省の統計調査によりますと、2020年に熱中症が原因で亡くなられた方の総数は1,528名で、そのうちの1,316名(8割以上)が65歳以上の高齢者でした。
(出典:厚生労働省 年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和2年)~ 人口動態統計(確定数)を元に作成)
ご家族に高齢者がいらっしゃる場合は、細心の注意が必要です。家で介護をしている場合、いつの間にか高齢者の部屋の温度が急上昇していて、熱中症になりかけてしまった、という事例もあります。今回は、高齢者のための熱中症対策をご説明します。
熱中症とは
高温で多湿な環境に、長時間いることで、主に次のような状態になることを、熱中症といいます。
・体温調節機能が働かず、気温の変化についていけない
・体内に熱がこもってしまい、外に熱が逃げていかない
熱中症は、屋外だけでなく、室内で何もしていないときでも発症してしまいます。 高齢者が家にずっといて、外出をしていないから安心、とは言い切れないのです。
なぜ高齢者は、特に気を付けるべき?
熱中症患者のおよそ半数は65歳以上の高齢者です。なぜ、高齢者が最も多いのでしょうか。それは、以下のようなことが原因となっているためです。
高温多湿の状況でも、暑さや水分不足に対する感覚が低下
気温の変化に対する体の調整機能が低下
(出典:厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイトを加工して作成)
体の機能低下チェック
あなたの高齢者の様子をよく観察してみてください。もし、次のようなことに当てはまるようでしたら、体の機能が低下している可能性大です。周囲が気を配って、熱中症対策に力を入れる必要があります。
- 暑い部屋でエアコンも付けずに、平気な顔をしてTVなどを見ている場合
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温度に対する体の感覚が鈍くなっていますので、気温の上昇に気が付いていません。家族がエアコンの管理をしましょう。
- 水分を食事以外あまり取らない場合
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暑さによる喉の渇きに、本人が気が付けなくなっています。脱水症状の恐れがあるため、周囲が水分補給を促す必要があります。
- 高温多湿の環境でも、なぜか高齢者だけ汗をかいていない
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体の自然な調節機能が低下している可能性が高いため、そのような場所へ行くのは避けましょう。
高齢者の熱中症が疑われた場合の対応法
- 涼しい場所へ避難
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室内の場合は、エアコンの効いた部屋へ移動し、屋外の場合は、大きな木の下など、木陰で風通しの良い場所を選んで一時避難しましょう。
- 体温を下げる
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熱を下げる効果のある、太い動脈が通っている箇所(首、脇、股関節まわりの足の付け根付近)を重点的に冷やすと効果的です。
体を冷やすものが手元にない場合は、まず近くの自動販売機をさがしてみましょう。冷たい水やお茶を多めに買えば、一時的な保冷剤の代わりになります。 - 水分補給
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水分補給と同時に、塩味の飴なども併用すると、脱水予防になります。外出時には、バッグに入れて持ち歩くと良いでしょう。
熱中症かも?こんな時はどうすればいい?
- 声をかけても返事がない場合は?
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反応がない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
救急車が到着するまでにできることとして、できる限り涼しい場所へ避難させる、服をゆるめてあげて体を冷やす、などの応急処置が必要です。
- 水分補給をしても、症状が良くならない時は?
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声かけには応じるが、周囲が水分補給を促しても症状が改善されない場合は、急いで病院へ連れていきましょう。
(出典:厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト を元に加工して作成)
感染症と熱中症のどちらを優先すべき?
感染症対策のため、マスクを外すことに抵抗がある人は多いですよね。しかし、マスクをしていると、熱が体内にこもりやすくなりますので、熱中症対策にはなりません。高齢者は、感染症と熱中症のどちらにもなりやすく、両方の対策が必須です。そのため、以下のような工夫をする必要があります。
両方の対策をするためには?
エアコンをつけていても、定期的に窓を開放する
熱中症対策のためエアコンを付けると同時に、換気をして感染症対策を行いましょう。しかし、窓を開けるなどの換気は室内の気温を上昇させてしまいますので、普段よりも低めの温度設定にしましょう。自動運転モードの方が、電気代の節約のためには効果があります。
人との距離を確認しながら、マスクを頻繁に外す
やむを得ず屋外に居る場合は、混雑した場所へは近寄らず、人と離れた上で、頻繁にマスクを外して休憩を取ることが必要です。
日傘や帽子を忘れずに
外出時にマスクを忘れることは少ないかと思われますが、曇りの日などは帽子や日傘を忘れがちです。しかし、天気は急に変わるものですので、忘れないようにしましょう。
よくある間違えやすい対策
喉が渇いたからといって、こんなことをしていませんか?
若い年代の人は、猛暑日に、冷たい飲みものを一気に飲み干したとしても、あまり心配はありません。なぜなら、体の機能が普段から正常に働いているからです。
しかし、高齢者にとっては別です。普段から体の機能が低下し、胃腸も弱った状態で生活しています。そのような高齢者が、一気に冷たい飲み物を飲んでしまったら、間違いなく、体に負荷がかかってしまいます。
どうしても冷たい物を飲みたい場合は?
冷たい物は少量にし、なるべく常温に近い飲料を、ゆっくり飲むように、周囲が気を配りましょう。
まとめ
熱中症予防のためには、毎日、気温をチェックし、高齢者の平熱も把握しておく必要があります。介護者自身も体調の変化に気をつけながら、高齢者への配慮を行いましょう。
高齢者が介護施設に入所をした場合は、24時間365日、快適な温度設定で過ごすことができます。また、万が一の場合でも、医療関係者がすぐに駆け付けますので、熱中症や感染症への対応も万全です。
介護施設の選び方について、下記の記事にまとめていますので、ぜひお読みください。